もう今は廃刊になってしまったが、『女学生の友』という女子高校生を対象にした月刊雑誌があった。
私は大学の先輩筋のwebライティング・代筆屋のアシスタントとしてその雑誌の取材にあたっていた。
ある時、高校生の心中事件が起き、私は女子高校生側の取材をすることになった。
取材はwebライティング・代筆屋3人が担当したが、一人は事件現場の三原山に出向き、一人は男子高校生の学校や家を担当し、私は女子高校生サイドの取材を担当することになった。
編集者が私に指示したのは、
①彼女の高校の取材(学校関係者にあたり、心中の原因、並びに高校生として彼女の学校生活についてのコメントを取る)
②彼女の友達の取材(彼女の人となりについての取材。心中事件を予期させるような言動があったのか)
③彼女の実家の取材(葬式に出て彼女の肉親のコメントを取る)
であったこの取材をおおせつかった時、私は本当に憂鬱になった。
自信もなかった。
それでも勇気をふるって(ふるわないと干上がりそうだったから)①と②の取材はどうにかできた。
しかし③の取材は不調。
肉親のコメントを取ることはできなかった。
もう時効だろうからバラすと、私は肉親の取材をしなかった。
位牌をもってうなだれ歩く肉親をやり過ごし、葬儀の列の後ろについていって、親戚のオジさんと隣組のオバさんらしき人にチョコチョコと談話をとり、サイドの情報で何とかデータをまとめた。
彼女の家の墓所は「野菊の墓」のすぐ近くだったので、そのあたりの情景をびっしり書き込んでなんとか凌いだのであった。
取材の中で一番ツライのが葬式取材だが、これが交通事故死とか病死であればいくらか救いはある。
しかし、心中事件となるとこれは最大級にツライ。
何がツライかといえば、その取材の大義名分がみつからないのだ。
心中した人の家族は世間に隠れるように葬儀を執り行っている。
そこヘノコノコと出かけて、「娘さんの思いを伝えるためにもぜひひと言」と両親にコメントを求めるというのは、お邪魔虫以外の何物でもないだろう。
編集者の話によると、男子高校生側の取材を担当したwebライティング・代筆屋は、悲しい顔を作って弔問客を装い、なんと座敷に上がり込んで焼香し遺書も手に入れてきたということであった。
「叶わんな」と私は思った。
